Iceage – For Love of Grace & the Hereafter ~変化と熱量のロックンロールアルバム

レビュー
デンマーク・コペンハーゲン出身のポストパンクバンド。2011年に『New Brigade』でアルバム・デビュー。本作は2021年の前作『Seek Shelter』に続く6作目。

2010年代以降の重要ロックバンドの一つであるICEAGE。しかしアルバムごとにかなり印象が異なるため、どこかバンドの核を掴み切れずにいるというイメージでいた。初期2作ではポストパンクの急先鋒として注目を集め、その後3rd『Plowing Into the Field of Love』以降は、ポストパンクを軸にしながらもゴシックなキャバレーやアート・ロック的な質感を取り込み、音楽性を拡張してきた。

6枚目となる本作は一聴して、まるで2000年代のロックンロール・リヴァイバル真っ只中へ引き戻されたかのように思った。The LibertinesやThe Strokes、The White Stripesがシーンを席巻していたあの時代の熱気が、そのまま蘇ってきたような感覚。20年近いキャリアを積み重ねた彼らが、2026のこのタイミングでここまで直球なロックンロール作品を出してくるなんて、最高じゃないか!
向こう見ずな若さだけで突き抜けるだけでなく、十分に傷つき、それでももう一度ハートに火をつけようとするような、純度の高い感動的なまでに瑞々しいロックンロールだ。

全編を貫くのは、危ういほどのロマンティシズムとダイナミズム。そして、それらを成立させているのがエリアス・ロンネンフェルトの気怠く、それでいて切迫感を帯びた歌唱だ。彼の声が乗ることで、どの曲にも不思議な魔法が宿っている。

一方で、本作はユーモアにも事欠かない。M2「Match Head Girl」冒頭では、突然のスキャットのように激しく歪な発声が可笑しくて笑ってしまうし、M3「The Weak」で鳴る、素人っぽく吹かれたようなリコーダーも「何なんだ・・・」とニヤリとさせられて楽しい。

M6「Mother of Pearl」は思わずThe Strokesを連想したし、M8「1835」からはThe Libertinesが持っていたあの危ういロマンティシズムが濃厚に漂う。リードトラックM9「Star」の性急な疾走感も最高にクールだ。続くM11「Holy Water」は陽性のビートと元気いっぱいのギターリフが鳴らされながらも、前のめりなボーカルが楽曲全体に緊張感と性急起感を与えている。そしてラストを飾る「True Blue」では、スローでシューゲイザー的な質感へと表情を変え、心地よい余韻を残してアルバムは終わる。

聴き終えるまでに、「向こう側へ突き抜けてしまいそうになる」感覚、つまり、最高のロックンロールを体験したときの、「あの感覚」が何度か訪れる、最高のレコードだ。

[favorite tracks]
M1:Ember
M3:The Weak
M4:No Fear
M8:1835

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