映画「マイケル」見た

コラム

目下大ヒット中の映画「Michael/マイケル」を見てきました。
アントワン・フークア監督/ジョン・ローガン脚本

自分はマイケル・ジャクソンについてはライトファン程度だが、最高に楽しめた。近年のミュージシャン伝記映画「ボヘミアン・ラプソディ」「エルヴィス」「名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN」などどれも楽しんできたが、興奮度という意味では圧倒的に「マイケル」が最高でした。

少しネタバレ含むので、見たくない方はご注意を









よく言われているように、大ヒットと対照的に批評家の評価はあまり良くないとの事。
主な批判ポイントは
・内容が薄っぺらい
・主要人物以外の描写が浅い
・演出の為に時系列がめちゃくちゃになっている
・負の側面(特に児童性的虐待疑惑)を描かず、都合の良い部分だけを抜き取って描いている

といったところで、それらのポイントはまあ理解できる。ただ、いろんな事情で意図的にそうしているのだろうと納得すれば、映画館の音響で超名曲のパフォーマンスを大迫力で味わえる、徹底したエンターテインメント作品として最高の体験ができる。

ここでは個人的に良かった点を2点だけ書きたいと思います。

レコーディング/スタジオのシーンが最高

マイケル・ジャクソンと言えばどうしてもステージ上でのパフォーマーとしての印象が強いが、制作過程やクリエイターとしてのマイケルもしっかり描かれている。いくつか例を挙げると

  • 「I Want You Back」で足が動いてしまう子供マイケル
    少年マイケルにとって「歌うこと」と「踊ること」は一体化している。レコーディングブースで「動くな」と言われても体が勝手にリズムを刻んでしまい、ステップの音をマイクが拾ってしまう。何回注意されてもどうしても体が動いてしまう様子が可愛くてたまらない・・・!
    それを見て才能に気が付くモータウン創始者・ベリー・ゴーディ・ジュニアとのやり取りも素晴らしく、彼はクリエイターとしてのスタジオワークや演出を教えていく師のような存在に(そしてそれは父親とは対照的かのように描かれる)

  • クインシー・ジョーンズとの初タッグによる録音「Don’t Stop ‘Til You Get Enough」
    冒頭のささやくようなイントロのスキャットパートの録音シーン。名曲が生まれていく感が生々しく描かれていて大興奮。この曲はマイケルがソロ作品として初めて単独で作詞・作曲したシングルであり、それまでの大人の指示でパフォーマンスしていた時代からの解放が表れているように感じて嬉しくなる。

  • アルバム『Thriller』のパズルがカチッとハマる瞬間
    演出臭くもあるが、曲順やアルバムタイトルが決まっていく過程が、誰もが知っている「あの形」になっていく感じにぞくぞくする。

ステージの完全にショーアップされたマイケルが我々が知る「スターとしてのマイケル」の凄さなら、これらのスタジオのシーンは「ただひたすらに音楽を愛した表現者としてのマイケル」という感じで新鮮に感じた。

悪者として描かれる父親ジョセフ・ジャクソン

全体を通して物語は「父親との確執」を主軸に描かれ、マイケルの意思にとことん反対する悪い父親として描かれる。でも、よく見るとそうでもないように感じる。
大人になったマイケルは「もう子供じゃない。自分の事は自分で決める」としきりに言うが、マイケルはずっと子供部屋のような部屋にいて信頼できる大人以外とは心を開いて話せない。ジョセフは本当はマイケルの事を心配していたのかもしれない。
チンパンジーのバブルス君が家に来た時の父親は唖然とした表情ながらもどこか優しさを含んだように見え、マイケルがCM撮影中の事故で火傷を負った際に言った医師への言葉「彼の帰る場所はステージだけだ」と言うのも冷たいようではあるが、核心的な言葉であるようにも思える。

実際の彼がどれだけ酷い言動をしていたのかは分からないが、少なくとも映画の中ではマイケルの才能を理解し、彼なりのやり方で家族を守ろうとしていた人物として描かれているようにも見えたし、見方によっては圧倒的な天才であるマイケルが生まれてしまった事で、自ら主導権を握り家族の絆を深めようとしてきた状態が崩されてしまったとも見えなくもない。

つまり、父と子がお互いどう向き合うのかを描くことがもう一つの主題になっていて、映画として奥行きをもたらせていると思った。
(もちろん虐待は許されないし、それによりマイケルを押さえつけて傷つけてきたことは事実なのだろうが。)


そして最後、すべてを吹っ切り、無敵オーラを纏ったマイケルが、圧巻のエネルギーで「BAD」を叩きつけて、映画は唐突に終わる。あの痛快さは味わった事の無い爽快さだし、夢の世界と権利ビジネスの闘争を描いた作品だとも感じた。

2026年に蘇った熱狂に乗れた事も嬉しいし、あれから「Off the Wall」と「Thriller」を聞きまくってその素晴らしさに浸っています。続編もあるらしいとの報もあるので、楽しみに待ちたい。

タイトルとURLをコピーしました