Westside Cowboy – It Goes On by ~続いていく。これからも。

レビュー
イギリス・マンチェスター出身の4人組。Jimmy Bradbury (Vo./ Gt.)、Reuben Haycocks (Vo./ Gt.)、Aoife Anson O’Connell(Vo./ Ba.)、Paddy Murphy (Dr.)から成る。グラストンベリー・フェスティバルが主催する新人オーディション企画で優勝したことがきっかけで、フェスの本編にも出演。本作はプロデューサーにLoren Humphrey (Geese, Cameron Winter, Wunderhorse) を迎えて制作されたファーストアルバム。

2026年、最もワクワクさせてくれる、UKマンチェスター出身のギターポップバンドのファーストアルバム。こう書くと常套句のようでやや警戒されるかもしれないが、何も言わずにこの最高のレコードに体を任せてほしい。

まず1曲目、“Kick Stones (The Boys)”。シンプルなビートと反復されるギターのストロークの中で繰り出されるルーベン・ヘイコックスのクールなボーカルは、時間を追うごとに熱を帯びていく。そこにオコネルの魅力的なコーラスが重なるころには、演奏のダイナミズムは最高潮に達する。そう、まるでThe Strokesの“The Modern Age”を初めて聴いたときのような高揚感。曲の終盤、「Have you heard that the boys / They are gone this time?」というフレーズが繰り返されるころには、すっかりこのバンドに恋に落ちているはずだ。

英国マンチェスター出身。音楽大学で出会ったメンバーを中心に結成された4人組で、「スキッフルの曲を演奏するため」という内輪のジョークとしてスタートしたという始まりと、自らを「Britainicana」(British+Americana)という造語の独自ジャンルで呼ぶセンスからも分かるように、アメリカのインディへ異常な憧れを持つバンドとして特徴的で、USインディーやカントリーの影響を感じさせるサウンドだ。本作はGeeseを手がけたローレン・ハンフリーをプロデューサーに迎えて制作されている事も納得で、そのサウンドはThe Velvet UndergroundをはじめPavementやWilco、Big Thiefなどを彷彿とさせる瞬間がある。

一方で、Black MidiやBlack Country, New Roadらを経た、複雑で実験的なサウス・ロンドンのシーンを中心としたUKインディには距離感があった事をインタビューなどで明かしており、また全然マンチェスターっぽさも感じないのだが、ギターのフレーズやメロディのニュアンスの端々にUKインディ感も強く感じられる事が憎い。

“Dobro”では泥臭いブギーのようなグルーヴはT. Rexのようだし、“Well Done Kid, You Did It”はThe Smiths的なギター感触とArctic Monkeysを思わせるUKインディらしい雰囲気を纏っている。

つまりUKインディバンドが無邪気にGeeseやBig Thiefのようなオルタナ・カントリーを取り込んで混ぜ合わせているという意味で、「Britainicana」という呼称はシンプルに的確だし、そもそもいつの時代も英米の音楽は互いに影響を与えあってきた。本作「It Goes On」はその言葉通り、その音楽の連なりが続いていくという感覚とともに、2026年を象徴する1枚だ。

ちなみに最終曲「You Could Have Died There On The Dancefloor」は、そのタイトルからArctic Monkeysの「あの曲」を思わせる。曲調も全然違うし、直接的な関係は無いのだろうが、かつてダンスフロアでの狂騒を歌った曲と対比させて「あそこで死んでいたかもしれない」と投げかけることで、現在の若者のリアルな、ある種の切実さのような心境と接続されるようで、ハッとさせられる。

[favorite tracks]
M1:Kick Stones (The Boys)
M4:Well Done Kid, You Did It

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