サウス・ロンドン出身の6人組ロックバンド、Man/Woman/Chainsaw。SHAMEらと同じサウス・ロンドンのシーンから登場し、Black Country, New Roadやblack midiらからの影響も感じさせながら、注目を集めてきた。本作『Cannonball』は、Fiction Recordsからリリースされたデビュー・アルバム。
2024のEP『Eazy Peazy』では奇抜なポストパンクという印象だったので、本作を最初聴いた時は同じバンドかと戸惑った。バイオリンが編成に組み込まれた特徴はそのままに、彼らは様々な要素を複雑に、丁寧に作り込み見事なアートロックに昇華させた。
1曲目「Only Girl」は、バイオリンとピアノの鮮やかな旋律にシューゲイザー的なギターが調和する、まさに彼らの特徴を象徴するようなナンバー。繊細さとダイナミズムを同居させながら、アルバムの世界へ一気に引き込む見事なオープナーだ。
2曲目「Canyons」ではさらにストリングスが加わり、穏やかな導入から徐々に緊張感を高めていくスリリングな展開を見せる。続く「Goddamn, Lizard Man!」では一転して、男性ボーカルによる気怠い歌声とゴシック・ロック/ブルース的なムードが漂い、4曲目「Lighter」ではラウンジ・ポップのような趣を持つバラードへ。
ここまでの流れで大胆に表情を変えてそのバリエーションを見せつけ、満を持して登場する5曲目「Nosedive」が、本作の大きなハイライトだ。
変化していくピアノのフレーズにヴァイオリンが絡み、ボーカルの隙間を埋めるように音が重なっていく。そこへ「baby, get me back up over you」のフレーズが繰り返され、自然な流れでアンセム感を生み出していく。激しさとポップな親しみやすさが絶妙なバランスで同居した、アルバムを象徴する1曲だ。
アルバム後半も、繊細な音像の中にシューゲイズやグランジを思わせる荒々しさが顔をのぞかせ、静けさと激しさ、甘さと不穏さを行き来しながらも、そのスリリングな感触は最後まで失われない。
そして最終曲「Something Else to Give」で、アルバムはもう一つのピークを迎える。不穏なベースの低音フレーズが鳴り響く中、バイオリンの美しい旋律が絡み合い、複数のボーカルが共鳴するように響く。
他の曲で見せてきたような激しさはここでは影を潜め、この曲全体を包み込むのは優しさだ。静かな余韻を残しながらアルバムを締めくくるその響きが、なんとも感動的だ。
その多彩なサウンドと表現力によって、ポスト・パンク/アートロックの荒々しさから、甘いポップ・バラード、繊細なフォークまでを1枚に凝縮した『Cannonball』。さまざまな音楽性を取り込みながらも散漫になることなく、それぞれを高い次元で成立させている。
デビュー・アルバムにして、すでにMan/Woman/Chainsawというバンドの個性がはっきりと刻まれた、実に見事な1枚だ。
[favorite tracks]
M5:Nosedive
M11:Something Else to Give

