MITSKI @ FUJI ROCK FESTIVAL’26 WHITE STAGE(2026.07.26)

ライブレポート

あれから1週間。WHITE STAGEで体験したMitskiのステージのことを、ずっと考えている。

その表情や仕草だけで、一曲ごとに異なる演劇を見せられているようなパフォーマンス。雨の中、フジロック最後に目にしたライブだったことも相まって、その光景は深く心に刻まれることとなった。

ライブ前のSEは「犬のおまわりさん」。「迷子の迷子の子猫ちゃん」と歌われる童謡に、猫というモチーフも重なり、彼女が作品の中でたびたび描いてきた「どこにも居場所がない」という感覚を思わせる演出にも感じられた。この選曲は日本公演ならではのものだったのだろうか。

最新作『Nothing’s About to Happen to Me』のオープナー”In the Lake”からスタート。アコースティックな質感の響きが心地よく、伸びやかな歌声が会場をゆっくりと包み込んでいく。ステージにはソファやテーブルなどの家具が並び、最新作のコンセプトどおり、まるでMitskiの部屋に招かれたかのような温かな空気が広がっていた。

“Where’s My Phone?”では、スマートフォンが見つからず部屋中を苛立ちながら歩き回る仕草を見せる一方、背後には電話で会話する古い映像が映し出される。現代のコミュニケーションを皮肉るような、その対比の鮮やかさにも感心させられた。

それにしても、彼女自身の表情や身振りが本当に魅力的だ。一曲ごとに異なり演じ分けるようなパフォーマンスは、まるで短編演劇の連作を見ているかのよう。素晴らしい歌唱はもちろん、その圧倒的な表現力に完全に心を奪われてしまった。

MCは全編日本語。「日本に来てすぐコンビニで納豆巻きとカリカリ梅を買いました」と嬉しそうに語る姿も実にチャーミングで、ステージ上で見せる孤独や切実さとのギャップが印象的だった。

ライブ全体を通して感じたのは、強烈な孤独と焦燥感だった。高い演奏力を誇るバンドが温かなアンサンブルを奏でる一方で、Mitski自身からは、どこにも属することのできないような孤独が絶えず漂っている。その感覚をより際立たせていたのが、「Dan the Dancer」「Francis Forever」といった過去曲だ。最新作のオーガニックなサウンドの中にあっても、これらの楽曲からはインディ・ロックど真ん中の鋭さがはっきりと伝わってきた。

その後も最新作を軸にしながら、歴代作品の楽曲を織り交ぜてライブは進んでいく。個人的に最も聴きたかった”Lightning”、そして柔らかく歌われた代表曲”My Love Mine All Mine”、”Nobody”が立て続けに披露され、完全に感極まってしまった。

本編ラスト”The White Cat”の前、彼女は「私に生きがいを与えてくれて、どうもありがとう」と日本語で語りかけ、演奏を終えると、バンドが演奏を続ける中、ひとり走り去るようにステージを後にした。その余韻だけでも十分に胸が満たされていた。

アンコールで披露されたのはファーストアルバム収録の”Pearl Diver”。死をモチーフに、深く潜ることを歌うこの楽曲を、細部まで感情を張り巡らせた圧巻のパフォーマンスで歌い切り、90分に及ぶステージは幕を閉じた。

冒頭の話に戻るが、彼女にとって日本でライブを行うということは、どのような意味を持つのだろうと今でも考えている。

自分はその場には居合わせなかったが、後日行われた単独公演では、「私は世界中どこに行っても当てはまらない人だった。でも分かったことは、どこにも当てはまらない人がいっぱいいるんだと思います」「あなたたちは大切な人です」と声を詰まらせながら語りかける場面があったという。

願わくば、今回の来日公演が彼女にとっても、どこか救いとなる時間であり、温かな記憶として残っていることを思わずにはいられない。

90分にわたる濃密な表現を浴び続け、疲労は完全にピークだったが、心は満たされ放心状態のままWHITE STAGEを後にし、自分の2026年フジロックも満足感と共に幕を閉じた。

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