Rostam – American Stories ~ロスタム流アメリカの肖像

レビュー
Vampire Weekendの創設メンバー。2016年に同バンドを脱退し現在は他アーティストのプロデューサーとして数々の作品を手掛けながらソロシンガーとして活動。本作はソロアルバムとしては3作目に当たる。

HAIMやClairo、Frank Ocean、Carly Rae Jepsenらの作品で発揮されてきた卓越したプロデュース・センスは言うまでもないが、本作『American Stories』でRostamが向き合っているのは、他者ではなく自身の物語だ。

色褪せた逆さまの星条旗が掲げられたジャケットと『American Stories』というタイトル。イラン系移民の家庭に生まれたアメリカ人である彼の出自を思えば、その意味を考えずにはいられない。実際、本作は彼のキャリアの中でも最も直接的に「アメリカ人としての自分」と向き合った作品だろう。

両親がイランからアメリカへ渡り、ペルシャ文化を紹介する活動を続けてきた家系に生まれたRostamは、自らの感情や記憶を掘り下げながら、同時にアメリカという複雑な国家の輪郭を描き出していく。アコースティック・ギターやピアノが織り成す穏やかなアメリカーナを基調にしながら、随所でペルシャ由来の響きが顔を覗かせる。

Clairoを迎えた「Hardy」は本作のハイライトの一つ。繊細なメロディと豊かなアレンジが絶妙に絡み合い、Rostamがこれまで築いてきたポップ・センスの集大成のような輝きを放つ。

一方で終盤の「Come Apart」から「The Weight」へ至る流れは、本作のもう一つの核だ。個人的な感情の揺らぎが、社会や政治へのまなざしへと自然に接続されていく。その視線は決して声高ではないが、だからこそ強く胸に残る。

『American Stories』は、アメリカーナとペルシャ音楽の融合を試みた作品であると同時に、自身のルーツと時代への問いを静かに刻み込んだ作品でもある。柔らかな音色に包まれながら、その奥には複雑なアイデンティティと現代社会への思索が息づいている。優しくどこまでもRostamらしい一枚だ。

[favorite tracks]
M4:Hardy (feat. Clairo)
M9:The Weight

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