Alex G – Headlights ~インディ・スピリットの深化

レビュー
アメリカ ペンシルベニア州出身。10代から自宅で楽曲制作を始める。2014年のアルバム『DSU』でインディシーンで注目を集め、以降ローファイなインディフォークでありながらも実験性あふれる独自の世界観で多くの作品を発表。本作はドミノからRCA Recordsへの移籍後初の作品となる。

オリジナル・アルバム10作目にしてメジャー移籍第一弾作だが、少なくとも彼のインディ性や実験性が後退した印象はない。

全体的にはニール・ヤングやR.E.M.を想起させるアメリカーナの雰囲気のカントリーやフォークといった方向性で、前作までに顕著だった空間的な響きや音の広がりは、本作では意識的に抑制されているように感じられる。その点でやや地味な作風という印象を与えなくもないが、その分楽曲の核である「歌」そのものによりフォーカスを当てている作品だと思う。

さらに、聞き込むごとに細部の作り込みの繊細さやバリエーションに気が付き、ストリングスやエレクトロニックな音がさりげなく差し込まれ、プロダクションの厚みを持たせている。

ボンゴのような打楽器と美しいアコースティックギターの音色が織りなす「June Guitar」でアルバムは幕を開ける。中盤の間奏とアウトロでフェードされるハーモニウムのような音色が空間を埋めていき、情景が変わる。リードトラックとなった「Afterlife」ではまったく違う印象のスネアがビートを刻み、バンジョーのようなカッティングギターが広域を印象付ける。ビートの多彩さと不統一さにより楽曲の感情温度や語り口の違いを際立たせることに成功しているように感じる。メジャー移籍というキャリア上の転換点において、彼はスケールを拡張するのではなく、むしろ音の距離を縮める選択をしたように思える。

ソングライティングの円熟と繊細さ、そして実験性を失わない姿勢が、この作品に静かな普遍性を与えている。派手さはないが、時間と共に輪郭を増していくアルバムだ。

[favorite tracks]
M1:June Guitar
M3:Afterlife

2025年7月リリース作品

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