Mac DeMarco – Guitar ~「気配」として鳴る、新しい親密さ

レビュー
カナダ・ブリティッシュコロンビア州出身。独特の「緩さ」を持つローファイな表現が特徴で、2014年の「Salad Days」で高い評価を得る。細野晴臣ファンとしても知られる。

先行曲「HOME」を聴いた瞬間にポール・マッカートニーを感じたが、ジョン・レノン的なサイケデリアも同居していると思った(かといって別にビートルズっぽさはさほど感じないが)。

ジャケットにも表れているようにロサンゼルスにある自宅のスタジオで、自ら全ての楽曲の制作・演奏・録音を行ったという、制作過程も内容も完全に私的な表現に寄せられている。元より音数が多い作風ではないが、本作は彼のキャリアの中でも、最も親密さを感じさせる作品だろう。
音の質感もギターの生の感触や歪み、弦がこすれる音、部屋の残響などを生かしたような作りで、完成された作品を聴いているというより、彼の生活音にそっと触れているような感覚になる。前作までの作品もリスナーとの距離は決して遠くなかったが、本作ではその距離がほとんど消し去られてしまったかのようだ。
日常生活の空気に溶け込んでいるメランコリックさとほんの少しのサイケデリアをすくい取るような、ギターの音色と強調されないボーカルに陶酔できる。細野晴臣の作品に通じる、音楽を「作品」ではなく「気配」として差し出す感覚が、本作の親密さにも確かに息づいている。

音楽シーンとの接近やポストジャンルといった周りの世相を感じさせる表現とは無縁の、私的さ・親密さ・静けさが魅力で、それがゆえに彼が未だ真のオルタナティブな表現者であり続けていることが伝わる。

[favorite tracks]
M1:Shining
M7:Home

2025年8月作品

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